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数寄者の小道具






炉縁黒柿




炉縁のお話






◇炉縁寸法  

外寸法:1尺4寸角(424o角)四方

天場(てんば)、見付(みつけ)巾:1寸2分(36o)

立ち上がり(高さ):2寸2分(67o) ※京畳厚みと同じ

内面(うちめん):3分(9o)で4面取っています。






◇炉縁の約束

四帖半以下の小間台目席:木地炉縁を用います。桜・桑・栗・黒柿・松など・・・。


四帖半以上から広間席:塗り炉縁を用います。 真塗り・掻き合わせ・蒔絵物など・・・。






◇杢・柾目の使い分け

天場杢目・立ち上がり高さ柾目・四方柾など、好み物はじめ、木地縁の材の魅力を引き出す為

また、各流儀好み、宗匠、家元の好みなどにより面巾を変えてみたりします。







◇炉縁の据え方

塗り縁の場合、石炉、塗り炉等、直接当たる部分に傷がつかないように、炉壇の四隅に三角に折った

奉書を間に挟み敷きます。表に花押のある物は客座から見る為、亭主の座す側に納めます。

木地縁の節や景色のある物もこれに習うのが約束とされています。







◇その他の約束事

木地組みの留め方は切り留めではなく、四方差し回し(時計回り)が基本組みで、立ち上がり部分は

ほぞ組み、ぐらつきが無いように栓、矢型栓込みにします。







黒柿の最高位の杢目が乗った材 炉材に製材されたもの


画像左の短い1本が杢目が有れば良いと言う事ではありません。 四本同木、同杢品を使うため、


画像右のような杢の良品の7尺(2m100o)が必要で、いくら炉に据えた時、炉壇側、畳側の面が見えないので


二面だけ杢が乗っていれば良いと言うものではありません。






基本的に炉縁四本共、四面に杢があったり、柾目が通った材が要求されます。また、火に近く据える為、


10年〜20年の乾燥した狂いの無い材から得られたものでなくてはなりません。さらに茶の趣として


景色のある物をと言われたら、立眩むほど難易度が非常に高く、探し出すのに苦労します。





ここに黒柿炉縁を何点かお見せしますので、杢目など趣きも含めて見比べてください。


たまたま柿の走りの季節でしたので、ミシュランガイドならぬ柿になぞらえランク別に柿の数としました。







二ツ柿ランク




先に説明した、柿の芯部に表れる真黒(まぐろ)と呼ばれる部分で取った炉縁です。杢目としては縞目に


入りますが、一般に知られている白黒がはっきりしていて、色彩がぼけた、杢目立ちが荒いものを見かけますが、


この炉縁以下の物は茶会には向かないと思われます。釜によっては写りが良く渋い真黒の良さが出た炉縁です。











三ツ柿ランク



縞目のバランスが良く表れている炉縁です。黒柿の縞目はこのくらい詰んだ杢目バランス良い縞目杢が


あって炉縁と言えます。縞目が際立った良品です。













四ツ柿ランク



このクラスの黒柿材は非常に得難い杢目柄で、老齢木の持っている枯淡の渋さが伝わってくるような趣です。


この炉縁材に拭き漆を施し、広間用として用いても見劣りしません。











五ツ柿ランク



縞目、孔雀、小豆の各杢が重なった最高位の杢目立ちの作品です。


これ以上の黒柿を要求されても無理な杢目立ち。長く銘木商を商っていますが、今まで数組しか


扱った事がありません。三十年お茶を習っておりますが、茶会でこの手を拝見したのも一回あるかどうかです。


この手の杢目に出会うのは非常に珍しく材料価格で組50万以上はします。著名な木芸指物師に委ねられて


出来た作品は100万円クラスと思います。木地炉縁の中でも黒柿が一番高価と思います。









炉縁そのものは茶の世界では脇役ですが、いざ手に入れようと思えば一生でめぐり合う事があるかどうか


ある意味垂涎の名脇役です。
































昔はこのように炉縁も分解ができ、稽古が終わり水で洗い清め(洗い縁の名の由来)


旅箪笥に納め、持ち運んだと言われています。今で言う出稽古、出張教授ですね。










桐旅箪笥













現在使われている木地縁には必ず四方差し回しのほぞ穴組みが茶の往事の名残り後となっています。













参考に杢目を並べ比べた炉縁作品の黒柿杢目は今日なかなか得難い柿の木≠ナ


今後、お茶会に呼ばれた際にはこのホームページの事を思い起こされ参考にし、美しい木地縁の杢目柄を


思い浮かべて再考していただければ幸いです。




柿の木にまつわる奥が深い杢目、黒柿炉縁のお話でした。












26.3.2 東京数寄屋倶楽部 村山元伸