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木場を愛でる

「正月風景」





私の店先の正月の飾り付けです。屋久杉の大きな年輪の衝立を背に大きな木挽きの大鋸(おが)を一双(いっそう)、注連縄を張っての飾り付けです。


両脇に青竹に門松飾り一年の始めの木≠ヨの感謝の心持ちです。




        


材木屋と銘木屋の大きな飾りの違いは、外(店先)に板飾りはしない代わりに暮れに仕入れた銘木級の丸太(原木)を店先に飾り、昔はお抱えの木挽や


各店の持ち回りの木挽きさんもいて正月挨拶がわりに今年一年良い丸太が挽けるように酒でお祓いをしてすでに墨掛けをした丸太の木口(こぐち)に


鋸を入れる儀式をし、その店の主人から酒と食事を頂きます。腕の立つ木挽師は人気があり、多くの店から声が掛かり正月三が日飲みっ放しで


何時に家に帰ったかわからないという豪傑の木挽きさんもいたそうです。












昭和40年代頃の気合の入った″゙木店の店先飾り。昔からの墨で書かれた板材・結束にも各店独特の飾り付け。


材木屋は暮れに板類に紅白の紐や縄で結う位置まで決め店軒下一杯に各店競うように思い思いの飾り付けをします。賀正≠竄サの歳の干支の


マークの入った擦り板(版)を用い意匠を施します。写真の板飾りは江戸時代から続く特殊な墨字でこれ専門の三河地方の職人さんに書いてもらいます。


この方々も各店を持ち廻りで板に長さ・巾・束入のマークを書き正月らしく筆で海老≠ネども書きます。時代考証もうるさい時代でしたので、暮れの時期


歌舞伎座を始めテレビ局、芝居用の板にこの字を書く依頼も多かったそうです。旧木場私の子供時代各店街中飾り付けがあり、


羽根つきで遊んでいる情景も今では(一枚物)の絵ですね。











特殊な字を書くためのしゅろで作られた筆











独特な数字の雛型です。












私の所にある昔の特殊な字の数々の板















今年新木場で見かけた材木店の正月飾り      菱大木材梶@於





新木場に移転して42年になります。300軒以上ある材木関係できれいに正月飾りをしていたのは写真の材木店1軒です。時代の流れと言ってしまえば


終わりです。本当に寂しい限りです。深川木場を題材にした浮世絵師、安藤広重が今蘇って見たら、なんと言うでしょうか?




25.2.5 東京数寄屋倶楽部 村山元伸