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江戸の風一人事
緑壇(りょくたん)の仏像??????
先日同業者の方に新聞の広告面に緑壇という木から彫刻された仏像が売られていて、すでに
誌上で何回か頒布されており、買った方から改めて緑壇は何の木かと質問されたそうです。
広告の文面を抜粋します。
いま、緑壇が注目されています。緑壇は、黒檀や紫檀と同様、壇木とされる銘木。
緑壇を西洋に輸入した名門フッガー家が、巨万の富を築いたため、家運隆盛を願う
「成功の木」として珍重されました。東洋では高僧の念珠に用いられてきました。
ほのかな芳香を放ち、世界一重い木としても知られています。時を経るにつれて色が
変化し、ときに翡翠(ひすい)のような深みと光沢に変容。まさに「木の宝石」です。
まず整理しましょう。壇(たん)が冠らせる木材は昔より黒檀・紫檀・香木の白檀しかありません。
その語源は歴代中国の皇帝しか使用を禁じられていた為です(玉座が有名)。
銘木業界のいろいろな人に聞いてもはっきり言い当てた人はいませんでした。事実私も知りません。
緑色と言えば(正確に言いますと)緑に近い色オリーブ色までの範囲で黒柿の芯部の孔雀杢(くじゃくもく)の緑
清流で洗われた水車洒落板材の錆色の緑・青黒檀の黒緑・オリーブ色の朴(ほお)材・小笠原桑の金オリーブ色
しか思い当りません。しかし現実にありました。リグナムバイタ(西インド諸島、中米アルゼンチン・
現地名で「生命の木」と言う意味)と言う木です。これなら知っています。船のスクリューの受け軸や機械の
滑車にも、その堅牢で耐久性を買われている材です。現在は強化プラスチック材に押されておりますが、
今も東京駅八重洲口前のヤンマー本社・ヤマハでも油に浸された状態で(木地では見たことがない点がミソでした。)
またこの材の有名な事は世界一比重が重く水に沈む木として有名です。木の径は30〜40pとさほど大きな木では
ありませんが、堅牢で堅さでも世界一とされています。
写真では段木片なので芯部がヒスイ・エメラルドのような色彩を放つ部位が本当にあるかは
わかりませんが、確かに芳香もあり色彩も緑の縞が見られます。広告は決定的な「ウリ」は
書かれていませんが、緑壇というネーミングこの木をよくぞ探し中国の彫刻家に彫らせ故事と
からませ物語を付けた、東京書芸館さんには頭を下げると共に、敬意を表します。
我々業界もまけずに木材利用大国、日本の材の魅力を引き出し促進をもっと考えましょう。
追 この方唐木等語らせたらこの人しかいないと言われている本所の田島銘木工業の会長さんに
文中のヒントをいろいろ教えていただきました。この人はすごい方です。
24.7.4 東京数寄屋倶楽部 村山元伸