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数寄者の小道具






八月の茶杓 弐









左:銘傘松峰(さんしょうほう)

右:飛泉(ひせん)













共に八月にふさわしい涼≠フ茶杓です。傘松峰とは福井県の九頭流川上流部の谷間にある有名な永平寺≠フ


別山号です。深い杉木立の中にあり、作品の節上の樋を挟んで両側に谷川と杉特有の木立に似た煤影がはっきり


見て取れます。江戸時代、広重の絵にある、街道の坂上の杉木立ち、木陰で一服、涼を取っている場面、杉の木立


姿、谷川のせせらぎ涼しさを感じさせる茶杓です。















飛泉(ひせん)


山間の瀧か石清水の飛沫(しぶき)涼を感じる銘です。写真のように節下に正に飛び散る水滴にみて取れる。


昔竹節を鉈で払った跡があります。何百年前の農家の屋根裏軒先に掲げた竹材、たまたま作意、意図としない


刀跡が燻され煤竹となり、数寄者の手により現代に茶杓として蘇り、銘≠ニなる。


不思議な縁(えにし)にも取れます。













杉木立の陰影













飛泉 あざやかに残る当時の刀跡


























八朔(はっさく) 旧暦八月一日の事をさします。七夕から八朔日までは道教と仏教が結びつき先祖への供物食物を


持ち寄って供養し祝うことが変化して現在の中元≠フ始まりとされています。茶道では稲の初穂を宮中に献上した


日と言われ祝儀の日とし、中元の挨拶日とされ、来客者のために懸釜(かけかま)をする日とされています。


一重折撓(おりため)で大きく丸味をもたせ煤の色の明るさを今年初めて実った初穂のようにみて取れます。


八朔 盛夏から残暑秋の気配季の折り返しとの意味(櫂先が深く折り返している)にとりました。
















義山(ギヤマン)ガラス製ですので、盛夏に涼を感じます。扱いに注意が必要で、


なにせガラス製なので茶碗の縁で茶杓を軽く一つ打って茶を払うとはいきません。


音無しで間を取ります。最近の作品ですが試みとしては面白いと思います。














銘 伊予すだれ


写真でみると何か土産物の羊羹包みに見えたのでは?


銘は伊予簾(すだれ)です。茶杓は煤竹ですが、中節上下に渡り、すだれ越しに見る変化の富んだ、


光の差し込みがみて取れます。銘につけた数寄心に驚かされます。










伊予竹の海苔簀子に茶杓




茶杓箱を包みの極細のいまでは得難い時代がついた海苔造り時の干し簀子をすだれに見立て包みにしている


凝りようです。このような発想、銘と景色、感性の高さ、削りも上手で私は他に見たことがありません。


江戸時代のすだれはすべてこの伊予竹だったそうで、海苔の製造時上等海苔を作るうえでこの細かい竹が


必要だったと言われています。ヨシではなく竹です。今では京の祇園街に見る外すだれは丈夫さから今でも


伊予竹すだれが使われています。















この方の茶杓は外からの自然の姿と内なる感情表現とが重なり合って生む銘″゙はもちろん茶道を


熟知され削り出しも長い経験が更に裏打ちされていて驚きです。







数寄者 畔江漁徒作

義山:広畑久仁彦作








25.8.29 東京数寄屋倶楽部 村山元伸