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数寄者の小道具






垂撥自在板(すいはつじざいいた)





垂撥はその形が琵琶の撥(ばち)に似ていて壁から掛けるところから「すいばち」と呼び、


一重折釘固定したタイプと真ん中に溝を切り通して上下に花入れの高さを調節できる物(自在型)


とがあります。主に書院形式の中釘が打っていない襖壁(格式の高い床)や床柱以外の外柱にも掛け、


塗り壁の床の間には用いないのが約束です。現在では玄関先や寄付床の飾りとして使われています。


垂撥は流儀や好みで大きさや材質も含めて細かく定められています。






ここに紹介するのは床に御軸を掛ける自在板です。形は撥(ばち)型を基本に軸の長さにより竹釘で


自由に高さ調節ができます。また部屋の格により「真・行・草」使い分け出来るよう作ってあります。






「真」は菱穴で「方」を表しています。「行」丸穴で「圓(えん)」を表し、人が集まり結びつくの


意味で「方圓(ほうえん)」の意匠になっていて、「草」は小振りにまとめてあります。










作者の風里谷藤伍氏によると、昔は数寄者の方が多くいて自分の使い勝手の良く自分好みの


製作をよくたのまれたとの事です。












この垂撥板は各80gの重さで軽く出来ていて杉板の裏に「鹿皮」が貼っており軸の横ズレが無く、


壁の痛みが生じないよう工夫されていて仕舞時に竹釘が簡単に収納出来るようになっています。












市販されている銅製品のバネ式や安価な竹の自在では御軸の格はもちろん釣り合いが取れず


趣にも欠けます。小道具として一つあると本当に便利な道具です。



指物師:風里谷藤伍 作






24.7.17 東京数寄屋倶楽部 村山元伸