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数寄屋材



木材乾燥技術 水中乾燥






木材乾燥には現在3つの方法に分類されます。


@天然乾燥:自然の光、風などの事象を利用する

A人工乾燥:蒸気、気圧、煙、高周波、熱源などを利用する

B水中乾燥:@を併用しながら水中を利用する。





木場を愛でるで紹介したとおり、木材は切った時栄養分、樹脂分、水分で重量があります。製品になるまで


天然乾燥では長い時間を必要とします。特殊材では10年・20年の歳月を要する材(楽器材など)もあります。


水中乾燥は言わば、完全乾燥までの過程を短縮するための作業の一部です。小さな部材や小径丸太は6ヵ月最短で


製品化できるのも事実です。東京新木場は木材業者が多く集まる街です。現在大きな水面2面は主として外国材の


集積としての場の利用が大部分を占めてきました。この水面はすぐ外の東京湾と直結していて純海水です。海水でも


水中乾燥した材としない材とでは、大きな差が生まれます。特にヤニムラ、溜りのある松材は5年程浮かばせておくと


ヤニムラが無くなります。桧類はヤニ筋の発生が突板にしたり板材にした時、発生を抑える事が出来ます。


また外材の標高の高い産地から来た材、中国チベット雲杉やユーラシアシベリア材など比重が多い材は2〜3年


漬け込んだだけで不思議と材の狂い、暴れが現れません。












実際に写真を通して説明します。久しぶりに入荷したアメリカ産ウォールナットのコブ材です。このような木が


縮んだ堅い杢目をつんだコブ材は天然乾燥した場合、捻れ割れが生じやすい為、土場において1ヶ月として


持ちません。特に貴重な材や特殊な杢目を持つ材は必ず水中乾燥をおすすめします。





@市販されているポリ容器、ホームセンターなどで売られている安価な物で充分です。丸型、角型等いろいろ

ありますが、写真のようなそこに排水の弁が有る方が便利です。


A水に漬け込む前に表皮や汚れを取り、できればタオル等を掛け1日〜2日雨に打たせたり水を散水します。


B乾燥後の捻れ反りを見込んで製材したブロック材を容器に入れ水道水を張ります。


C当初は自重により浮き上がる材もありますので、水面から材が顔を出さないようタオルで覆い、ブロックや

石などで重石にし、必ず水中に漬け込みます。























D@〜Cまではそんなに労を取りませんが、ここからが大変です。クラロの場合、1日で容器の水色が

変わるぐらいアクがアクが出ます。毎日アクが出し切るまで水を取り替え漬け込む位置などを変えます。

クラロはあまり漬け込み過ぎると腐りが生じますので注意してください。材によってですが、

10日ほどで他の材のアクは出なくなります。



E毎日水を取り替えるのは一苦労ですが、アクが出なくなったら3日に1回のペースで容器の水を取り替えて

下さい。水道代のこともありますので・・・。実際写真の数量を仮に毎日水を取り替えると水道代の請求が

2か月で2万円ぐらい来ます。





段差を利用して水をうまく循環させるのも手です。









F材種にもよりますが、黒柿・桑などコブ材は漬け込む日数は3ヶ月が目安です。

材によっては白太部分に青(スポルテッド)やカビが生じる場合があります。




G最終の1ヶ月は容器の水を抜き、天候を見ながら1日おきに空干しします。この1ヶ月前から木の方で

サインを送ってきます。漬け込んだ材から白いヌルヌルした白濁した物質や白い糸状の物が出終わった頃

重石を取り去ると少し材が浮かび上がったりしてきたのが目安です。



H最後容器から材を引き上げ天地を必ず逆さにして陰干しし、風を直接当てないようにして10日間待ちます。

この後桟積みして室内で天然乾燥します。クラロの場合2〜3年が目安です。










普通では必ず割れる材の代表ですが、水中乾燥の過程を入れると大きな損失なく無事乾燥します。





黒柿の縮緬材







ケンポナシの縮緬材








クラロウウォールナットのコブ輪切り材








栗の木に出来たコブ輪切り材







水から引き揚げられた材の取れ切れなかった皮なども丹念に取り除き陰干しします。











クラロウォールナットはアメリカ産在来のアメリカ種(くるみ)にヨーロッパ種(イギリス・フランス)を


接木挿し木された時、材の拒絶反応から出来るバール瘤材です。これを有名にしたのは007シリーズ、


ジェームスボンドの愛車、アストンマーチンのパネルメーターやハンドルノブ材に使われています。


ベントレーやイタリアの高級車のパネル類にもクラロがほとんど無くなり貴重材となった今アメリカ産


ブラックウォールナットの柾目材がトヨタレクサスの内装材に現在使われています。古くは


ロールスロイスのパネルメーターはタイ産の花梨コブ材が使われていました。







I陰干しした後、板材などは杢目の割れそうな部分を読み取り、ボンドを杢目に塗り(柾目はほとんど割れません)

木口に厚みと同じ材を釘打ちし反り止めをします。その後厚みを揃えて天然乾燥の桟積みをします。






ボンドを塗った赤松板








木口に反り止めの桟を釘打ちした所









きれいに厚みを揃えて天然乾燥させている所










今なぜか水中乾燥がネットも含めてもてはやされているそうです。事実私のところへ問い合わせが多くあります。


今回紹介する資料以外でわからないことがあれば、御遠慮なく電話してください。


業界の秘術≠フ時代ではないので、お話しさせて頂きます。






地方の在住の方は井戸水、近くに水の流れがあればクラフト材以外もっと大きなサイズの木材を水に


漬け込む事が出来るので幸せと思います。数寄屋建築材はある一定の長さを必要とします。水中乾燥させて


出荷したいのですが、都心では土地と水の問題を避けて通れません。



水中乾燥



木に関係される方必読と思います。











25.9.19 東京数寄屋倶楽部 村山元伸