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季節の室礼 床の間飾り
五月(皐月・早苗月・多草月)
端午祝ノ儀 その参
戦国当世甲冑飾りです。これに香合・時の花を入れ込めば充分茶会にも持っていけますが、
少し脇道具を使いながらの飾り付けをします。
前回もお話ししたように、床敷は五月決まりの若草色の毛氈では甲冑飾りに写りが弱く、全面
浅葱色(あさぎいろ)の毛氈を敷きました。背の屏風はもともと大正期の大和絵で描かれた幔幕(まんまく)
でしたが、波模様を和紙張りし、上部に祖母が使っていた帯地(おびぢ)を一文字入れ
仕立て直した節句屏風です。
甲冑自体は昭和の四十年代の頃の作品です。平成に入ってからの流行りの合金製・家紋入り・デフォルメ
された劇画タッチの鎧・兜物は雅味に欠けた作品が多く、茶会などの床飾りにはあまり向いていません。
安価な物でも時代が付いた五月人形に少し手を加えただけで見栄えよく大振りの物は一間床(1820p)に
特に写りが良いです。ここでは藤堂高虎(とうどう・たかとら)の甲冑を基本に少し手を加え脇道具を
使いながらの飾り付けです。
鷹狩り℃桙フ鳥の置物などは今では人形店でも見かけません。秀作で羽根を一つ一つ描いており、
一目見て熊鷹(くまたか)≠ニわかるぐらい特徴をよくとらえています。
脇役の小道具。左右紅白の毛槍(けやり)一対、孔雀の羽根の馬標(うまじるし)・よく出来た
火縄銃・子の成長を願う守り袋が付いた薙刀(なぎなた)よくみると刀紋まで付いています。
戦前の作品は時代考証の上に熱のある職人が作った物ばかりで出来の良いものばかりです。
花入:武者人形に合わせて、脛当て(すねあて)花籠
花:白藤・花菖蒲
紙敷:毛氈に合わせて朱色
香合:根来塗りの鯉香合
最後に鉄砲狭間付の蚕楯(かいだて)を立てて完成です。新旧の小道具が甲冑を引き立て役に廻り、
面白い取り合わせになったと思います。殿方は戦国時代の物が特に好きです。床飾りがやり過ぎだと
思ったら、加飾・引き算です。これが基本です。
25.5.5 東京数寄屋倶楽部 村山元伸