ホーム 数寄屋材 季節の室礼 数寄者の小道具 展示場 作品 アクセス 江戸の風一人事 お問い合せ



作品




茶室扁額





表千家の先生から茶室扁額の作成依頼を頂きました。皆さんの中には人頼みで出来上がった扁額を

揚げている方を多く見かけます。扁額が出来るまでの手順を書きます。




@茶室を拝見させて頂きます。

どのような雰囲気の茶室か必ず現場に行って確かめます。







A掲げる場所をお聞きします。

広間・小間の内扁額なのか、棟に掲げる扁額なのか新工法の茶室ですと

壁面によっては受釘が打てない場合もあります。







B揮毫紙を預かります。

持ち帰って揮毫の内容や意味を読み取ります。内容のむずかしい場合は書家や

篆刻師と相談する事もあります。印の字が細く小さい物は彫る事が出来ません。







@〜Bの手順を必ず踏んだ上で初めて製作の段になります。







C扁額をデザインします。

掲げる場所、大きさ等がすべて頭の中に入っているので一般の長方形以外の丸額や

縁付額等預かった揮毫の書体等に合わせて何点か施主さんに提出します。










D依頼主(施主)に確認

実際に掲げる場所にデザインした大きさの何点かを当てて頂き、再度検討します。







E扁額材料と色・配色の確認

一般的には千家では杉が好まれますが、栗皮付物・松・桑・欅

柾目・杢目と書体に合った材料を選びます。色、黒・白・緑・鉄紺等

これも書体や雰囲気に合わせて選びます。










C〜Eを確認後初めて製作に取り掛かります







F職方(彫師・塗師との打ち合わせ)

額材料の裏側の納まりも決定します。







G納額引き渡し

出来上がった額を見て頂き、指定の場所に掲げます。

もちろん受け金具はすべて本鉄の手打ちの折釘を使用します。















京都大徳寺の名僧の揮毫の為、本来茶道の額として使用しない

欅材を書体に劣らない為今回あえて使いました。


寸法は長さ1尺1寸5分×巾7寸9分です。

牡(カキ)胡粉膠入・印朱漆

















茶室の最終章、夢の完遂です。正に画竜点睛(がりょうてんせい)≠ナす。






○額は陰陽五行≠ノよりすべて尺寸法の奇数割が決まりです。






○字色彩

内扁額の場合、白(胡粉)・緑青(孔雀石)・群青(ラピスラズリ)各岩絵具を始め

漆の中に各色を含ませた物までいろいろな色彩が楽しめます。

画家フェルメールも「真珠の首飾りの少女」のターバンの青は

宝石のラピスラズリを細かく粒子にして描いています。






外扁額の場合、雪雨風が強く当たるところでは黒漆の字色を使った方が無難です。

他の色彩の場合剥れ落ちる事があります。







茶道の世界では何事も控えの気持ちを重んじる為、至極極めの頂点を意味する金箔・金色は間違っても

使いません。関連する和菓子匠の看板もこの心持ちと同じです。

昔から金文字は三千世界の仏具・念珠店のみ許されていた色彩です。






ここで紹介した額は千葉市花見川区、新保邸茶室に無事納まりました。







24.8.15 東京数寄屋倶楽部 村山元伸