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数寄屋材



柿(かき)・黒柿(くろがき) その参






数寄屋材ではあまり作例のない作品を紹介します。





台目構えの席、本来台目柱と床柱の間をつなぐ壁面の下見切材です。普通は竹の横木(台目引竹・三つ節)が

基本とされてますが、薄く削り上げた(刀欠はっかけ仕上がり)を化粧で用いています。竹以外、松・神代・

水車洒落材なども使われます。










点前天井の廻縁材四本は四本共木納め長手・短手違えて材を入れる事もあります。杉角・香節・桜などの

組み合わせもありますが、写真は長手の1本のみ黒柿の上杢材をさりげなく嫌味なく使った例です。











縞黒柿の板を10_に仕上げ、調和を保つ為に白糸の紅葉、栃板をあしらい中間色である赤松・肥松を

菱形に配しデザイン模様に仕上げた作品の床(ゆか)です。









黒柿は建築材以外にいろいろな用途、分野に多く使われる樹種のひとつです。





茶室小間の隅炉・向切りの壁際に入れる火避けの目的にも入れる無目板(むめいた)です。この板は

据える炉縁の材種や釜とのバランスを考え、全体として道具組の事も考え雰囲気に合わせるのが習いです。

炉縁は黒柿ならぬ白柿材の炉縁です。もちろん黒模様の多く入った炉縁が尊ばれますが、茶会で

咄(はなし)≠咲かすためトンチを利かせ、あえて白柿材を持っていく所に数寄の妙味≠ェあります。



例えば亭主は不思議そうに白柿を見つめている来客を尻目によく見てください。

次代の黒模様が薄く出掛っています。茶人として道を極めたと考えず黒柿に到らない半人前の未熟者ですね。

などの会話上手が聞けば勝負あった感があります。昔の数寄者は材の事もよく知っていたらこその話です。









茶杓二題は黒目ばかりの中を茶杓に削り上げると黒檀(コクタン)なのか黒柿なのかよくわかりません。

黒柿模様は適度に白が入ってこそ黒柿模様にパンチが利きます。


茶杓:数寄者 畔江漁徒作














黒柿の皮目、皮肌を生かした茶器棗(なつめ)≠ナす。この2寸(60o)内外の大きさで景色のある、また加工し

表れる杢目は稀です。


茶器:東都指物 風里谷藤伍作












黒柿はこんな所にまで!?、、とビックリされる使われ方を紹介します。


アクセサリー(指輪・ペンダント・イヤリング)に始まり、数珠玉・箸・菓子切り・囲碁、将棋に使われる


碁笥(ごけ)・駒入れ・駒薹に至るまで使われます。





茶道具の箱物の蓋・花器を置く敷板、黒柿で片身継ぎ合わせになっていて侘びを強調させます。












黒柿の杢目板を使った小物入れの箱です。玉手箱であり仕掛けを盛り込んだ指物作品です。組手技術と

その緻密さは芸術品です。著名は指物工芸家がこの黒柿材を使い多くの作品を遺しています。


東都指物師 筥幸(はここう)作


















ペンクラフトの第一人者として名高い方が製作しました。持つ人の手に合わせた特注品の逸品です。手に取り


木部模様を眺めたりで時の経つことを忘れます。1本1本丁寧に製作されていて、特に木部模様の中に小宇宙を


見ているようで飽きが来ません。世界中の銘木を使った品々で海外でも多くのファンが居ると聞きます。


昔、文具七宝八宝と呼ばれ、筆・硯・墨・水滴・墨床(ぼくしょう)・筆架(ひっか)・硯屏(けんぴょう)・


腕枕(わんちん)と文人が好んだと言われます。これらのペン類は現代版文具二宝ですね。



三重・伊勢 杢杢(もくもく)工房 野村収造り









25.3.8 東京数寄屋倶楽部 村山元伸