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数寄屋材



柿(かき)・黒柿(くろがき)



カキノキ科・産地、日本及び朝鮮半島・中国。カキの仲間は種類が多く、東南アジアはもとより


アフリカ・中南米熱帯・亜熱帯に約250種類あると言われ、この仲間で広く知られているのは、


唐木(からき)の黒檀(コクタン)です。日本では分布は本来は本州以南に多いとされ、北海道には無いと


言われています。種は在来の野生種と甘柿系・渋柿系に大別され古くは5世紀頃から栽培が始まった


とされています。ここでは数寄屋建材としての柿の木≠説明します。一般の柿は切ってみると


すべて灰色(白)の樹肉をしています。これは通称白柿(シロガキ)と言って建築等には用いません。


白柿の中で黒柿(くろがき)と言われる物が百本〜千本単位の中に稀に黒い縞模様のある物が出る事があります。


丸太時の木口(断面)に黒い点状の物から星形、網状の細かい模様まであり、この断面の模様により


丸太1本の価格が違ってきます。この黒い縞模様は一般に地中からの養分とタンニンで構成されると


言われますが、野生種に始まり栽培種でも出る事があり山地や標高にもよると言う人もいて、


今でも謎多き銘木の1つに数えられています。







黒柿床柱(三題) 左から真=E行=E草







角柱(真)


数寄屋では広間(八帖以上)の茶室に用いられます。杢目柄は棒状の縞目が有る事から一般に縞柿と


呼ばれます(杢目柄等は後程お話します)。この床柱はの杢目柄よりもっと良い杢目柄の製品は高値を呼び


ウン百万円≠ナ取引されます。数寄屋ではあくまで床に掛ける軸とのバランス、室礼(しつらい)より目立つ


杢目柄や形状は控える、避けるのが約束です。物足りない感もありますが、このくらいの縞目の方が白との


バランスも良く実際茶室に入ると意外と溶け込みます。角柱は四角の角(かど)、面巾により15_以上取ると


真行(しんぎょう)≠フ格となります。ここでは糸面(いとめん)取りなので、真(しん)扱いになります。















丸コブ洗い柱(行)


丸い形を更に凸凹にコブ状に彫り上げた柱です。製品にした時のバランスを考え、熟達した職人が黒・白模様を


うまく配置してコブ状に彫り仕上げた品です。正角柱からすると丸はやや下げた感があるので数寄屋では


行(ぎょう)扱いになり、6帖・8帖の茶室の床柱に向きます。更に侘びさすにはコブを取り去り、削り真円柱(行)


少し名栗(なぐり)目を入れたり六角形など形状を少し変えたり、拭き漆を施すだけで茶室の床柱の格が


真行(しんぎょう)・行行(ぎょうぎょう)・行草(ぎょうそう)と微妙に変化します。これが数寄屋の材料の妙味です。















豆黒柿丸太(草)


黒柿の柱の中でも非常に珍しく柱になるまでの難易度が高いとされている床柱です。この柱も芯材白(灰色)で


皮肌1枚分が黒柿特有の黒縞模様が出た物で、茶室小間等に使われる柱の径寸(3寸(90_)以内)の小径木に


これ程の黒目模様が出る確率は角・丸柱の比ではありません。40年商売をさせて頂いていますが、過去3〜4本


しかありません。曲がりが多少あった柱の直材部分7尺(2100_)を生かして数寄者の炉縁に組んだ事もあります。


「適寸をもった台目柱を」と望む方がいましたが、更に難易度が高く、水屋の袖柱を納品した事はありますが、


残念ながら台目柱はありません。関東では昔から数寄者に好まれた床柱のひとつです。この床柱を使った


数寄屋建築では、神奈川県鎌倉にある宗編流が有名です。あくまでも丸太なので各扱いは草≠フ格式です。


画像では見にくいかもしれませんが、胡麻塩状の渋い細かい黒柿模様です。皮を付けたままで長い期間養生


してから表皮を丹念にミリ単位で落としての仕上がり品です。この間、皮は虫害に弱く割れも発生し易く、


更に丸太全体にバランスよく黒目模様が出る事は非常に稀の稀です。











黒柿角材に表れた模様





黒柿角材の断面












豆黒柿丸太の皮肌に表れる模様







豆黒柿丸太の断面












切って倒してみないと解らない黒柿原木の根切り口







見事に縞目模様が見られる小口断面





これから更に難しい木取りが・・・・!?

昭和58年江戸川工場於山安










25.2.23 東京数寄屋倶楽部 村山元伸