ホーム 建築の心構え 数寄屋材 季節の室礼 数寄者の小道具 展示場 作品 アクセス 江戸の風一人事 お問い合せ



名所江戸百景「深川木場」 歌川広重




歌川広重の版画シリーズの中でも傑作と呼ばれる一枚です。


絵が描かれたのは明治維新の10年程前にあたります。蛇行する掘割の「藍ぼかし」の技法とと小雪舞う落ちる空の静寂さの中に


何かに驚いた二羽の雀がこの絵全体を引き締めているようです。


また見る人により漆黒の雪降る闇夜にも見て取れ「凛」とした木場の雪の情景を醸し出す一枚でもあります。


木場に初雪が降ると江戸っ子の「初物好き」と重なり丸太の暮雪を愛でる一大名所で西岸の商家の旦那衆や粋人・文化人の多くが


屋形船に「炬燵」を持ち込み中には芸者鳴物と幻影の木場の雪景色に酔いしれたと、「川並」の古老より良く聞かされました。


原図には料亭の名前なのか魚河岸なのか読み取れない「魚」の一字雪の積もった番傘が描かれています。写真は木場山安の屋号を


「遊び心」で入れてみました。













雪輪に「とんぼっき」 



粋人達の心の遊びと木の文化を生かした茶室空間を目指しています









印半纏「木場角乗り保存会」 





当時の木場は土手に緑多き松並木を背し、掘割には「筏組み」された丸太が川面を埋め尽くし「川並衆」と呼ばれる仕事師の


桟取(さんどり)に合わせ独特の「木場木遣」の労働歌が響き渡っていました。夏頃は多種のトンボが舞っていたと想像できます。


このトンボの姿形から「とんぼっき」と呼ばれる木場を代表する定紋が江戸時代中頃から使われ始めました。


「とんぼっき」の柄、書家で有名な三井親和が江戸に広め流行した「深川ねずみ色」を配しています。現代にも通じる色デザインです。


川並衆の余技から生まれた「木場の角乗り」は現在東京都無形民俗文化財に指定されています。


「深川ねずみ色」と言うと写真の半纏の地色が正しいと思いがちですが、実は水に濡れたときの色をより好んだと言います。


八幡様の祭礼(水かけ祭りの別名有り)時に、神輿の担ぎ手の半纏をよく見てください。



24.7.12 東京数寄屋倶楽部 村山元伸