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数寄者の小道具
7月 茶杓・茶器
左:ほたる棗
中:柄杓 合塗り棗
右:朱塗り瓢茶器
この時期の棗を紹介します。
手にとっても一見、桑木地に拭き漆塗り、利休形中棗にしか見えません。拝見時に手鏡を添えます。
黒の棗下尻に鮮やかな貝螺鈿が映し出される趣向です。正に蛍≠ナす。道具自体にトンチを利かせた
茶器は茶会でもあまり見かけません。口の立ち上がりの朱≠燉いています。
そもそも茶筅や柄杓はいわば消耗品なので利休が使った茶筅など聞いたことがありません。この棗は柄杓の
合(ごう)≠フ部分を生かして漆を重ね、月形の跡目に金砂子を散らし溝埋めをした茶器です。師と仰ぐ茶人
の使った道具の一部を見立て、志≠サの精神を受け継ぐ心構えです。近い例として茶杓で有名な
泪(なみだ)≠ェあります。利休作の茶杓を古田織部が竹筒に窓を切り、位牌として拝んでいたという話です。
この棗は合自体、山に見立て登る月を表したり、元々は竹で出来ていますので、竹取物語としても面白いと思います。
箱蓋に柄杓の竹を忍ばせています。
夏季にふさわしい形で系統的には武家茶人好みの茶器に多く見られます。瓢(ひさご)≠フ形は現代の感性
をも捉える美しいフォルムがあります。朱色の赤色を暑気払い≠フ茶会に使っても面白いと思います。
三茶器:東都指物師 風里谷藤伍造り
茶杓
銘川開き=@樋から折撓にかけて煤竹特有の色変わりがあり、この部分が両国の川開き花火のスターマインを
打ち上げるかのように見えるから不思議です。
銘ほたる≠アの竹は中国原産の斑紋竹(はんもんちく)です。径が小さい竹なので茶を掬うのに櫂先巾ギリギリ
で削った作品です。表皮に天然の渦巻き模様があり、これを夕の川面に飛ぶほたる≠ノ見立てています。
筒の平面削りをやり過ぎて竹地の穴が元に見られます。尻の光の穴ほたる≠ナす。
拝見に廻った時、裏側の追取(おっとり)&舶ェに銀粉汚しを施しています。この茶杓は替茶器ならぬ、
替茶杓の場として使うのも趣向と思っています。
川開き:数寄者 畔江漁徒作
ほたる:村山杉峰(自作品)
25.7.30 東京数寄屋倶楽部 村山元伸