ホーム 数寄屋材 季節の室礼 数寄者の小道具 展示場 作品 アクセス 江戸の風一人事 お問い合せ



数寄者の小道具






6月 桑(くわ)の茶杓









古く中国から伝来した養蚕技術は明治に入り飛躍的な進歩を示しました。江戸時代まで年一回春蚕(しゅんさん)


による糸の生産が、桑樹と蚕(かいこ)の飼育方法、品種改良など技術の進歩と共に春・夏秋蚕、年二回の


絹糸の生産が可能となり絹糸の輸出が日本の花形産業と呼ばれた時代がありました。蚕(かいこ)の餌となる


桑樹も明治の終わりには500種以上あったと伝えられています。







日本には在来の桑樹は養蚕樹とは別に5種の系統があると言われています。写真左は江戸指物で有名な


伊豆七島御蔵島桑£ハ称金桑≠ニよばれ桑材の中で一番珍重される材です。


写真右は日本各地に自生している山桑(やまぐわ)と呼ばれる桑です。






桑は茶道具として棗・香合・棚物・炉縁と諸道具の柄(え)の部分の小さな部材にも広く用いられる材です。








桑は3〜4月に開花した花芽は5〜6月にかけて結実した赤い熟した実を付けます。子供の頃にこの実を食した


年配の世代の方には懐かしさがよぎると思います。茶杓二点は御蔵∞山桑≠ニ異なる桑樹より削り出した


作品です。右のような皮肌を付けての作品は材はもちろん技術的に得難く桑の持つ渋さ≠ェ表現されています。


6月の茶杓桑≠ノふさわしい樹です。











古唐津の小振りの水指に銀製の座禅蛙(ほんらいは置物飾り)、葉蓋(はぶた)変わりの見立て≠ナす。


茶器は傘形(欅拭き漆塗り)









香合:笹舟に蛙 傘形(竹・煤竹製) 蛇の目傘

置物:沢蟹親子(本来盆景に使われます)

紙敷:蛇の目傘尽くし








梅雨のこの時季、気分的に鬱陶しさを感じます。雨に因んでカエル∞沢蟹≠ネど小道具を利かせての


床飾り道具組みをされると正に雨を楽しむ°C分になるのが不思議です。梅雨が明ける知らせ、雷鳴が響きます。




古来から桑樹が生えている場所は雷が落ちないと言う迷信が伝わっています。危ないものを避ける意味にも


使うくわばら!くわばら!≠ニ唱えるのは桑が生えている畑、原野、繻エ(くわはら)からの語源と言われます。


雷鳴あらば安全な場所へ!決して樹の下には居ないでくださいね


6月の茶杓桑≠フお話しでした。











25.6.19 東京数寄屋倶楽部 村山元伸