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数寄者の小道具






結び柳





正月や初釜の床飾りの内に結び柳(掛け柳)があります。床柱に生ける場合や床の間奥隅(四分一柱)に


掛ける場合が多いです。茶室の小間であれば楊枝柱(ようじはしら)(塗り残し柱)に掛けられます。


一年に一度この新玉の月のみ使用します。掛ける釘は柳釘(やなぎくぎ)≠ニ呼ばれ花器は青竹で長さ1尺程


一節が入り、径2寸〜3寸これに柳の細く長い枝を数本(3本、5本)生け、その内の一枝を輪をくぐらせ他の物と


床の間の下方に深く垂らし青竹の径元に根締めと称し縁起の良いとされる椿・千両・万両・松・南天・水仙など


草木を元に生けます。このような飾りを結び柳≠ニ言います。










結び柳の由来は中国唐時代の故事によります。古都長安から西(シルクロード)に向かう人はこの地で


送ってきてくれた友人家族と別れます。旅立っていく際、川辺の柳の枝先で丸い輪を作り旅人に手渡し、


また無事逢えることを誓ったとされます。遠い地に居てもまた会う事が出来るという印でもあります。


柳は陽≠フ木でその芽張りはやがて来る春を表し一陽来復(いちようらいふく)(冬が去って春が来ること)を


祝う心を表す形として床奥から座敷に向かって柳を垂らすのもこの意味になります。














「柳」・「留」はどちらもりゅう≠ニ言う意味発音が同じで、気を留める・長く留まる意味で「輪」「環」は


もどることを意味し、帰る・孵る・還ると同じ意味で一同正月に席を同じく会いましょう、という意味で


柳の一枝を輪の形にします。












普通の花屋さんで扱っているのは写真のように3m近くあるものでも枝の垂れがせいぜい1.5mぐらいの枝です。


これでは結び柳≠ヘ出来ません。垂れが3〜4m必要なので垂れ≠フ長さをはっきり注文して置くと良いです。


さすが茶花専門店では山陰地方の葉が落ちた結び柳用の長い中には5mくらい長いものも取り寄せてくれます。













幸いに私の住んでいる東京江東区は水辺の都市≠目指しているので、川辺にはたくさんの柳が


植えられています。写真の柳の木は樹高8〜10m有りこの柳枝の長い物を選びます。


細く長い枝は10本あって1本くらいの確率です。4mを超す物は稀です。













選んで取ってきた柳の枝をステンレスの針金などでだいたいの形をくせ付け≠オます。水に一晩浸します。


東京ではこの時期葉がまだ付いているので、葉を振るいます。結構大変な手間を要します。


水から上げて小指ほどの径の枝を選んで手(親指)で形・なりを考えしごきながら更に形を整えます。


形が整いましたら根締めの花を入れ軸を掛け柳も含めて床のバランスを調節します。









正月初釜の結び柳≠フ出来上がりです。水辺の柳が身近にあった遠い昔と違い自分の手自ずから生けようと


すると都心に住んでいる物にとって結構神経を使い重労働な事を痛感します。雑誌などで見る茶家の飾りも


グラビアの結び柳も見えない部分でおそらく多くの人の手職人がかかわっている事がわかります。


みなさんも一度結び柳≠ノ挑戦してみてください。














よく写真で床の間天井板を柳の枝が押し上げまるでのどに詰まった餅のようになっていたり、床から突然柳の枝が


下がっていたりと見苦しい生け方があります。これは柳釘≠フ位置が最初から違っているからです。










柳釘は床の間天井より最低小間で150o(5寸)・広間で210o(7寸)〜270o(9寸)必要です。








私は床より2mくらい下がって座し、寸切りの青竹の下部が少し見える方が安定があり良いと思います。











役釘(柳釘) 上より2本(浄益物)、中2本(中益物)青竹の取り外しが簡単にできるよう一重折れ先が

外側に向いています。下3本(鉄折曲釘)この釘を用いて代用になります。


形は平座(受け部が平らな物)は隅柱が面皮柱・丸柱用です。

座開(受け部が直角に開いている物)は隅柱が角柱に用います。








正月用の青竹の柳・根締めには水を入れません。長い茶事・来客用で長時間生ける場合は中落しに水を張って


生けます。直接青竹に水を入れて生けますと暖房などにより青竹が割れ、粗相(そそう)の原因になります。








25.1.10 東京数寄屋倶楽部 村山元伸