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季節の室礼 床の間飾り




二月(如月・梅見月・初花月・雪消月)

天神鷽替(うそかえ)神事



東都歳時記、旧暦1月24日・25日の両日は亀戸天神社(東京江東区)の鷽(うそ)替えの神事で


大いに賑わったと記されています。この神事に因んだ床飾りです。







床中央に菅原道真公の祭事で用いられたと思われる古い軸を掛けました。根来塗りの猫足薹に


御冠(実際に宮中で作られていたもの)を置き御冠の後ろに一枝の白梅を差し入れています。


古くは宮中において歌会時、題や季節により御冠の後ろに時の花枝を差しいれて遊び、


風流を楽しんだと言われています。








菅原道真公軸











御冠に飛梅∴齊}飾り










本家本元は福岡太宰府天満宮です。この末社は全国に大小一万社あると言われています。江戸時代、神職の


大鳥居信祐が信託、夢のお告げに従い飛梅≠フ木を用い道真公≠フ御神像を彫りこれを江戸の亀戸の地に


祀ったのが亀戸天神社の始まりと言われています。











槍梅の紙敷に御冠≠フ香合の取り合わせ






鷽替神事≠ヘもともと本家天満宮の近在の里人が正月木彫りの鷽≠持ち帰りこれを境内で互いに


取り替える事で一年の吉兆を祈ったと言う行事に習い、亀戸天神社でも江戸文政三年(1820年)に神官が


木彫りした物を参拝者に授けるようになって江戸の庶民に爆発的な人気を博したと言われています。


















朱塗り折ため盆に飾った鷽の木彫り



この木彫りは陰陽五行の考えから柳の木で作られていましたが、現在は神木の桧の木より作られています。


亀戸でももともとは鷽の木彫りを袖の中に入れ、同じく参拝者同士互いに交換することで、一年のいろいろな


悪い事がウソ≠ニなり吉に替わる物と信じられ、正月ウソ替え行事が当時江戸の若い男女の出会いの場でも


あったと、池波正太郎原作鬼平犯科帳≠ノもこのことが書かれています。













その後天神社は小さな鷽*リ彫りから大きな木彫りまで10段階有り、毎年小さなものから大きなものを


順に買い求め10年ひと昔諺(ことわざ)に引っかけ、江戸っ子の洒落でもあり、現在の形に至っています。


いずれにせよ菅原道真公は実在した人物で学問を良く納めた人物として有名で、学問の神様≠ニして


今日は多くの人が参拝されます。受験合格祈願を鷽の木彫≠ノ置き換えウソのように合格する≠ニ


言うのは鷽(うそ)の嘘(ウソ)です。








25.2.27 東京数寄屋倶楽部 村山元伸