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季節の室礼 床の間飾り




十二月(師走・厳月・氷月)

新酒・六瓢










題字に新玉酒・六瓢とあるのは一年無事であったことの感謝とくる年(新玉)も無病息災であってほしい


という念≠込めた床飾りです。





中央に掲げた飾りはハンドメイドデザインで酒≠フ看板である杉枝葉で造られた杉玉(すぎだま)≠ノ


故事に因み社(やしろ)の印として桧皮(ひはだ)で葺いた屋根と千木を付けました。


煤竹下に大小本物の瓢箪に六色の色掛けをして人の五臓(肺・心・肝・脾・腎)・陰陽五色を表し命(六腑)と


黄帝を六瓢(むびょう)とし来客者の無病息災(むびょうそくさい)と掛けています。


















床にコモ酒樽を置いても迫力がありますが、当時上等とされた塗りの角樽(つのだる)に注連縄(しめなわ)を張り


神や物造りの方々への感謝を表しています。














背景に金屏風を置き華やかさを出して大朱林と同じく重ね香合をあしらいました。


五行・陰陽の大極紋の盃と清國緑柚の盃薹(はいだい)との組み合わせです。


紙敷は銀揉み



今年の新酒を来客に振る舞い一年の労を互いにねぎらう飾り付けです。






奉書や赤い毛氈は器類を引き立てる役目です。五月飾り時に緑色の一般の敷布より赤・朱色の方が


迫力や華やかさを演出することが出来ます。







杉玉(すぎだま)


杉と酒とは関係が深く古く崇神天皇の時代活目(いくめ)という酒造り人が三輪大社の神の助力(神力)により


一夜の内に美酒にかもしたと言われる故事により酒屋・酒造蔵の看板として神木である杉の枝葉を束ねた杉玉


を今でも軒先に掲げることが行われています。







下り酒(くだりざけ)

昔は農家などではその年の秋に穫れた新米で自家用や祭事の酒を造ったことより季語として


今でも新酒と呼ばれていますが実際日本酒は晩秋から寒時にかけて杜氏(とうじ)達が仕込んだ酒を


翌年の夏過ぎた頃より本来の酒の味がまろやかになると言われています。仕込んだ季から4〜6ヶ月


醸造に手間をようします。現在の暦で11月12月が新酒の時期に当たります。江戸時代は旧暦の9月9日(重陽の節句)


から冷酒から燗酒に移るとされていました。人々は今と違い酒の季節の節目をちゃんと心得ていました。


江戸時代主要な酒産地である京阪から船で酒樽を乗せて大量に江戸へ運ばれました。船旅中杉樽が左右に


揺られて江戸に着くころは杉の香りが移り風味が一段と増したと言われます。江戸っ子は初に入荷した酒を


下り酒(くだりざけ)≠ニ呼んで大いにもてはやしたと言われます。当時江戸近郊関東でも地酒が作られて


いましたが下り酒にははるかに品質が及ばず下らない物(くだらないもの)@ヌくないものをくだらないものと


呼び今日に使われる語源とされています。ちなみに江戸に下った酒の集積地は現在の東京中央区新川堀で


今でも酒造メーカー各支店が往時の名残りをとどめています。











24.12.9 東京数寄屋倶楽部 村山元伸