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季節の室礼 床の間飾り




十月(神無月・神去月・神在月・良月)

秋の聲(こえ) 天地満・鳴子(なるこ)題









十月は稲刈りの季節です。早稲(わせ)はすでに九月中に刈られますが、大部分の稲田は十月に入ってからです。


秋の田畑が鳥獣に荒らされないように番をする人を田守(たもり)と呼ばれています。四六時中番は出来ませんので、


穀物農作物が稔(みの)りを迎えるとき、鳥達が荒らしに来ます。それを守る鳥威(とりおどし)の道具の一つが


鳴子(なるこ)≠ナす。板に竹管を糸で掛け連ねて縄を張ったところに付けます。侵入者が縄に触れると竹管が


板にぶつかってカラカラ鳴る仕組みです。今はあまり見かけないので若い方は知らない方が多いと聞きます。


庭園で見かける鹿や猪をおどかす道具として竹製の猪(しし)おどし≠フ方が知られています。











床中央の鳴子の板に一粒万倍(いちりゅうまんばい)≠フ書があります。稲の異名で一粒の種が数を増して行き


万作になるめでたい字です。茶道では裏千家十一世玄々斎宗室や十四世淡々斎宗室好みの徳風棗≠ェ有名で


蓋(うらおもて)に一粒万倍・一粒万々倍と共に籾(もみ)の蒔絵があります。また稲月に因んだ、俵(たわら)・


砧(きぬた)・稲塚(いなづか)・案山子(かかし)等の茶道具類は多くあります。床飾りは(大)の鳴子を中心に


(中・小)の鳴子を縄に付け張り縄に四方結界の色付御幣(ごへい)≠奇数組みにしました。













たわわに実った稲穂は日の移ろいにより金波(きんば)・銀波(ぎんば)≠ニも呼ばれます。稲穂の脱穀に使う


古材の水車歯車に稲穂と柿の実の一枝を差し、左に稲穂柄の寿大帛紗をあしらい柿の香合を置きました。











日本人と米との古くからのかかわりと豊年・収穫の感謝・来客者が心豊かになるよう願いを込めた床飾りです。









場の息抜きとして、良く出来た赤とんぼ≠柿枝にとまらせました。













鳴子の配置・縄張りの角度、題目の位置・御幣の数などに細かい気を配ります。来客者に見易くするため


寿帛紗の下に台棒・台紙を入れ角度を付けています。床飾りは一服の絵と同じで、床中に並べ飾り付ける事無く


空間に余白を残した飾り付けが必要と思います。







24.10.18 東京数寄屋倶楽部 村山元伸