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季節の室礼 床の間飾り
九月(長月・長雨月・菊月・夜長月)
「秋の虫聞床飾り」
日本人の遠い祖先は自然の中で季節の花や虫にも親しみ暮らしの中で、友としていた所があります。
今と違い科学の目の対象としてではなく秋の日常の日常を彩る鑑賞品とし、又心の安らぎや労を癒す
為のものとして、五感で愛でるものでした。
すでに虫については奈良、平安時代に万葉集を始め各歌集にも見られます。特に建長6年(1254年)の
「古今著聞集(ここんちょもんじゅう)」に美しい音(ね)の虫を得るために人々が野山で
虫狩り≠ノ競って出かけていたことが記されています。
江戸時代元禄年間になると江戸の人口の増加と共に専門の虫売り業者が現れ、文政年間には
今日のように鳴く虫の飼育、生産、流通が確立されたと言われています。
虫の音を楽しむと言う風潮は東洋独特のもので起源は古代中国と言われています。
明治23年(1890年)に来日したイギリスの文学者ラフカディオ・ハーン(小泉八雲)は市民が鳴く虫を買い、
その音色を楽しむと言う欧米では考え、想像も出来ない事で日記に詳しく書き残しています。
床の軸
河の土手でカッパが人間の真似をし、月を愛で酒に酔い笹枝をかついで良い心持ちで
歌を口ずさんでいる様子です。手許の提灯がほのかに紅色になっています。
軽妙な小幅物の水墨を生かした作品です。
「月に謳い花に吟ず」題 画賛物 矢部嵐渓作
床中央
駿河の千筋細工の虫籠です。中に同じく竹細工の鈴虫≠ェ虫の歌の百人一首の札に居ます。
敷板
ススキのように秋の寂しげな風情の演出には水車の古材が一番良いと思います。
仕切板から薄く指物師が造り上げたものです。寸法は黄金比と言われている、
1尺9分×6寸3分で何を飾っても写りが良い物です。
花器
これもどことなく寂しさの演出の為釣鐘′^の竹籠に夏秋の生花を入れてあります。
花器の置台は水車古材の歯車です。
紙敷
秋草模様に布袋竹の横笛香合です。
最近センサー付きの虫籠がありますが玄関先に置くとビックリして、いただけません。
8月にある虫聞茶会も業者が持ち込んだ生産飼育の虫なので季節が合わず味わいがありません。
私の友人が趣味で生産している鈴虫≠毎年50匹程新木場の自然の中にはなしています。
秋の中頃には、野生が戻り夕暮れ時から鳴き始めます。人の気配にも敏感になっています。
24.9.9 東京数寄屋倶楽部 村山元伸